ヨモツシコメの発動により、天羅は疲れ果てていた。
紗のバランスが狂い、大地は荒れ果て、空はよどみ、必然、民の心もすさむ。
同時に神宮家もその威信を失い 自然「倒宮論者」を生んだ。
しかし、神宮家:伏見には策があった。
神宮家の威信をとりもどし、再び天羅のバランスをも取り戻す。
すでに計画は80年の昔から進んでいる。
かつて、琥珀という名のオニを愛し、ともに生きた傀儡・久狗之地 供音は80年
のときを経て神狼の御霊に触れることで、豊穣と慈愛の神へと昇華した。
かつて、ディ=ゴは伏見のその秘術により、偽りの人の殻に封じられ、
玄旨醍醐帝として神宮家・北朝の名を世に知らしめるに力を貸した。
そして今、100年の長い間 明鶴院 藤麿ただ一人を愛し続けた、人となるべくして
創られた傀儡、惨號霧子を神とし、帝とするため、伏見は再度動き始める。
しかしまだ、伏見は気づいていない。みずからがすでに、絶対存在ではないことに。
「霧子はん。ずっと、ずっと見守っておりましたえ。」
「よかった♪ほんとはもうだめだとおもってたんだ。」
「狐晃さん、仇はあたしがうちますよ。」
「藤麿様・・・今、おそばに。」
常に天羅動乱の裏にあった神宮家崩壊の序曲はすでに始まっていた。
そして伏見も・・・。
次回 天羅万象・零 「神様の作り方。」
天羅の慟哭は、もうすぐ、終わる。